吉田晋之介
アーティスト
吉田晋之介(1983年生)は、2017年東京藝術大学博士課程を修了。2013年には、VOCA展では佳作賞を、神戸ビエンナーレでは奨励賞を受賞し、その翌年の第17回岡本太郎芸術賞では入選。
初期の吉田作品は、人工的な造営物を、匿名性を持った具象的なイメージで描き、その背景に人間の営為に対する信頼性と敬意が内在した作品であった。しかし、東日本大震災を機に自然の破壊力にその思いは一変し、描かれる人工的な対象物は自然の中で崩壊と混乱を象徴的に示すことになった。また、原発事故は、流布している情報に疑問を持たせ、目に見えない放射性物質への恐怖が彼の日常の風景を変えた。震災後現地に赴くものの、抽出されるイメージの多くはテレビ映像やネットによる映像が圧倒的で、現実に眼にしたものとメディアを通した映像が複合的に重なるように描かれ、具象的なモチーフでありながら思考を重ねた抽象性も感じさせる画面へと変化して行った。この一連の体験は、吉田の常識を覆し、制作への考え方を大きく変化さることとなり、その後も、大胆な筆致と練り抜かれた構成はそのままに、身近な変化や出来事を敏感に感じ取りながら制作を続けている。